投資の普及には地域差があることが指摘されていますが、実はもっと深刻なのは
世代による普及格差 です。

金融庁や証券税制のデータでも、NISAは30代以下や40代で急速に普及し、
60代〜80代では普及が大きく遅れています。

理由は単なる「年齢」ではありません。
背景には、いくつかの構造的要因があります。

①“預金で増えた世代”と“預金では増えない世代”の違い

現在の高齢者層は
定期預金で利息がつく時代 を経験しています。

  • 金利5%
  • 金利8%
  • 時期によっては10%前後

この記憶は強く残り、
“預金=安全+増える”という価値観を形成しました。

一方で現在は

  • 普通預金:年0.1〜0.2%
  • 物価上昇率:年2〜4%
    となり、預金は価値を減らす時代です。

つまり若い世代は
預金では資産を維持できない世界を生きています。

② インフレ体験の有無が金融行動を分ける

高齢者層は
“所得が増えて物価が上がるインフレ” を経験しています。

現役世代が直面しているのは

賃金は緩く、物価だけ上がるインフレ

この違いは大きいです。

前者
= 所得で吸収できるインフレ
後者
= 資産で吸収しないと生活が苦しくなるインフレ

資産形成の必要性の理由が根本的に異なります。

③ “NISAは老人には関係ない”という誤解

現場でも70〜80代から

「NISAは老人には関係ないでしょ」

という質問を受けることがあります。

しかしインフレは全世代に影響します。
老後は“現金収入が減る期間”ですから、本来は
現役以上に資産価値を守る必要があるのです。

問題は、運用のスタイルが違うということです。

若い世代
→ リスク許容度高、長期前提
高齢世代
→ 取り崩し前提、ボラティリティ極小、分散強化

“同じ銘柄を同じように買う”必要はありません。

④ 投資知識格差より深刻なのは“相談格差”

高齢者ほど

  • 投資より相談を求める
  • 判断の補助を求める
  • 過去の失敗体験や周囲の声に左右されやすい

という特徴があります。

情報消費ではなく

意思決定の支援

が必要になります。

ここにIFAや証券営業との接点がないと、
行動は止まります。

⑤ 世代格差は“企業が抱える問題”にもなる

世代別のNISA普及差は、個人の問題ではありません。

  • 継続雇用
  • 65歳以降の再雇用
  • 退職金の取り崩し設計
  • 賃金制度
  • 福利厚生の対象年齢

など、人事制度と密接に関わります。

特に65歳以降働く人が増える中で

“金融リテラシーが低い高齢層”は
企業の労働政策にも影響を与えます。

⑥ 今後のリスクは“世代内格差”

格差というと
若者 vs 高齢者 がメインに語られますが

より深刻なのは

高齢世代の中の格差

です。

年金+預金のみ
vs
年金+運用+取り崩し計画

では生活の安心感が大きく変わります。

まとめ

金融普及で語られがちな“地方格差”より、
実は“世代格差”の方が構造的です。

理由は

  • 金融行動の形成時期が違う
  • インフレの意味が違う
  • 資産形成の目的が違う
  • 相談ニーズが違う
  • 情報の入り口が違う

からです。