企業経営において、「どの事業が儲かっているか」を正確に把握できているケースは意外と少ないものです。
売上高や契約件数などの“見えやすい指標”は追われやすい一方で、
利益率・粗利構造・販管費比率・固定費負担・キャッシュ寄与といった本質的な指標は見落とされがちです。
しかし、会社を救うのは売上ではなく、利益であり、
利益を生むのは“事業選択”です。
■事例:売上は伸びていたが、資金繰りは悪化していた企業
ある情報系企業の事例です。
2025年に弊社がサポートした中で最高の結果となったと言っても過言ではない事例です。
ピーク時は従業員8名、売上数億円規模まで成長したものの、
資金繰り悪化により金融機関との返済条件変更(返済据置)を実施。
新たな借入は難しくなり、
従業員を実質的に解雇し、夫婦2名での経営に縮小。
それでもなお赤字が続き、給与も十分に取れない状況でした。
一見すると“売上はあるのに苦しい会社”であり、
典型的な黒字倒産予備軍と言える状態でした。
■部門別採算を行った結果、意外な真実が浮上した
同社の事業は3つに分類できました:
① 物販
② システム開発
③ システム保守
社長の認識としては、
“売上が一番大きい物販が主力で利益源”
というものでした。
しかし部門別採算を行ったところ、結果は真逆でした。
- 物販:売上最大だが粗利が薄く、経費率も高い“不採算部門”
- システム開発:案件ごとに粗利は大きいが波が激しく不安定
- システム保守:契約単価は小さいが固定収益で粗利率が最高
つまり会社が一番手放そうとしていた部門が
実は“最も稼いでいた部門”だったのです。
■戦略転換:売上を減らし、利益を増やす方法へ変更
採算把握後、戦略を変更しました。
- 物販:社長夫人1名で対応(人件費最適化)
- 保守:社長が注力し、解約抑止+新規獲得
- 開発:案件選別し粗利率の良い案件に絞る
その結果、
- 売上は減った
- 業務量は減った
- モノ・人の無駄が減った
- 資金繰りが良くなった
- 利益率が向上した
採算転換からわずか半年で収支が好転し、
経常利益率が△7% → +10%へ改善。
“売上を追う経営”から“利益と資金繰りを追う経営”への転換が企業を立て直した典型例です。
■中小企業にとっての示唆
部門別採算を導入すると次が見えます:
✔ 何を伸ばすべきか
✔ 何を縮小すべきか
✔ 何に人件費を投入すべきか
✔ どこを値上げすべきか
✔ どの顧客を維持すべきか
✔ どの案件を断るべきか
特に重要なのは
“儲からない仕事をやめる”のはコスト削減ではなく利益創出
だという点です。
■結論:数字は嘘をつかない。むしろ意思決定を助ける
この企業を救ったのは景気回復でも融資でもなく、
単純に“数字を正しく見ること”でした。
中小企業の倒産理由は外的要因よりも
内部要因(誤った意思決定)が多いと言われます。
部門別採算は、意思決定の質を上げるための最も効果の大きい財務ツールの一つと言えます。


